金沢・現代茶道具展「茶の時空間2025」旧中村邸展示

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金沢に息づく工芸のこころに、現代の美意識を重ねて

2025年11月に開催された工芸に関する国際的なイベント「金沢・世界工芸トリエンナーレ」の関連イベント「茶の時空間2025」は、金沢市工芸協会の設立100周年を記念して催されました。

金沢市の指定保存建造物である旧中村邸を会場に、歴代の工芸家による名品と現代作家の手による新たな茶道具・工芸品が一堂に会すなか、Teseraは伝統工芸の意匠を取り入れたモジュラーファニチャーを製作し、伝統と現代のデザインが交差する金沢の文化を背景に、新たな空間提案を行いました。

作品を展示するシェルフには、金沢の町家建築で用いられる伝統的な格子戸「木虫籠(きむすこ)」、伝統工芸の「箔加工」、伝統色の「加賀五彩」、石川県の県木である「能登ヒバ」を取り入れています。

光を宿す伝統素材 ─ 箔 ─

極めて薄く打ち延ばされた金属箔は、光を受けるたびに反射や陰影を変え、豊かな表情を生み出します。箔は、華やかさの象徴としてだけでなく、金、銀、銅、プラチナなど素材の違いによって静けさや深みをも感じさせる存在です。

日本の箔文化を支えてきた金沢では、幾度も打ち重ねる伝統的な製法によって、繊細さと強さを併せ持つ箔が生み出されてきました。

Tesera では、その揺らぎや濃淡までも美しさとして捉え、空間にそっと溶け込むかたちで箔を取り入れています。

装飾ではなく、佇まいとしての箔。 時とともに、静かな奥行きを深めていきます。

構造美をもつ伝統素材 ─ 木虫籠 ─

木虫籠は、金沢の町家に見られる伝統的な外観意匠のひとつ。

正式な木虫籠は、細い縦格子が並び、断面は等脚台形を成すことで、外から内が見えにくく、内から外はよく見える構造です。

この巧みな設計により、光や風を通しながらもプライバシーを守り、街並みに独特の陰影と風情を生み出しています。


Tesera では、この木虫籠の伝統的な構造と精神を受け継ぎ、フレームにその美しい格子の意匠を落とし込みました。

能登の風土が育んだ素材 ─ 能登ヒバ ─

石川県・能登の森で育まれてきた能登ヒバは、県木にも指定される、土地を代表する木材です。
抗菌・防腐性に優れ、虫を寄せつけにくい成分「ヒノキチオール」を含み、機能性も備えています。

きめ細やかな木肌とやさしく澄んだ香りが、視覚の美しさにとどまらず、触れた瞬間から使い続けた先まで、静かな心地よさをもたらします。
自然の力と、能登の時間を宿した一枚が、Teseraの佇まいを静かに支えています。

静かな華をもつ色 ─ 加賀五彩・臙脂(えんじ) ─

加賀五彩は、江戸時代の加賀藩が育んだ美意識を象徴する五つの基調色です。なかでも臙脂色は、黒味を帯びた深く艶やかな赤で、加賀友禅をはじめ、染織や陶芸、漆芸など多彩な工芸に用いられてきました。

町人文化の発展とともに、加賀友禅では五彩の濃淡を重ね、自然の風景や草花に着想を得た豊かな色表現が育まれました。華やかさと控えめさを併せ持つこれらの色は、情熱や深みといった精神性を静かに映し、空間に奥行きをもたらします。

臙脂色に仕上げたTesera の天板は、祈りや記憶、土地の風土を映し出す、加賀の美意識が息づく一枚です。