連載:放課後の大勉強  Chapter 1.箔

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Teseraは、創業の地・金沢に息づく伝統工芸の技を現代のものづくりへと昇華させることに取り組んでいます。 このたび、北陸を拠点に発行される定期刊行物『大勉強』との誌面コラボレーションにより、「放課後の大勉強」と題した連載を開始しました。 日本が誇る美の精神とTeseraの創意が響き合う、新たな表現のかたちをどうぞお楽しみください。 

 ※本記事は『大勉強』Issue 6に掲載された記事をもとに作成しています



 使い手の必要に応じて自由に形を変えるフレキシブルな〈Tesera(テセラ)〉の家具。部品を組み替え、新たな要素を取り入れたり、大きさや機能を調整したりすることで、その時々に求められる新たな家具へとトランスフォームできる。そのインスピレーションは、創業地である金沢の伝統が育んだライフスタイルデザインに着想を得ている。機能的で美しい町家が調和しながら立ち並ぶミニマルな都市景観。木造建築の特徴である、障子や襖といった可動間仕切りがもたらすフレキシビリティ。それらを修理しながら大切に使い続ける持続可能な在り方。こうした要素を現代の文脈で再構築し、さまざまな家具を生み出している。

 また、石川県ならではの伝統工芸の技術や材料を活かしたものづくりにも積極的に取り組み、今回は『大勉強』のリクエストにより純金プラチナ箔をフレームに施したスペシャルエディションを制作。ライフステージによって家具を買い替えるのではなく、形を変えながら長く使い続けることの価値を提案する。

純金プラチナ箔「久遠色」を施した Lowbord-Mr.大勉強のお気に召すスタイルEdition 

『大勉強』の別注により箔をフレームに施したスペシャルエディションを製作。

古来、金箔は薄く延ばすため金に少量の銀と銅を混ぜて作られてきました。〈箔座〉では純金99%に純プラチナ1%を合金した「永遠色」と、純金92%に純プラチナ8%を合金した「久遠色」の箔を独自に開発。屋外での使用含め、より金箔の魅力が表現できるように。

ローボードのフレームに施された純金プラチナ箔「久遠色」は、明るさと暗くスモーキーな風合いが共存した、奥深い陰影が特長。光を柔らかく反射するテクスチャー。光と空気が通るように設計された細かい隙間やアールのディテール表現も再現する匠の技

箔の表現は紙一重で、派手にも上品にも振れる。そのバランスを極める箔表現の世界。

 純金プラチナ箔「久遠色」が施されたローボードのジョイント部分。蝋燭の灯りに照らされることにより箔がしっとり上品に浮かび上がる。安土桃山時代に豊臣秀吉が造らせた金箔の茶室も当時このように見えていたのだろう。

 金箔は、その極薄の金属ならではの光の反射やしなやかな質感で、多彩な表情を見せてくれる素材です。金箔と聞くと、仏像や豪華絢爛な装飾を思い浮かべがちですが、金箔だけでも様々な色合いのものが存在し、また銀・銅・プラチナ・真鍮などの金属箔もあり、その色合いの多彩さに驚きます。

 箔は「箔打紙」と呼ばれる特殊な紙の間に金合金を挟み、何度も打ち延ばして薄く仕上げます。日本固有の「縁付金箔」と、生産効率を重視した「断切金箔」という2つの製法で作られており、それぞれに特徴があります。縁付金箔は400 年の歴史がある製法で、雁皮紙にわらの灰汁や柿渋、卵などを調合し、半年もの時間をかけて紙を仕込む手間暇のかかる方法。この工程が職人にとって最も重要であり、「火事になった時は、紙を持って逃げろ」と言われていたほど。その技法はユネスコ無形文化遺産に登録され、清水寺や西本願寺といった国宝や重要文化財の修復に欠かせない存在です。

対談:内田武彦 × 坂矢悠詞人


家具はディテールの集合体


坂矢 悠詞人(以下、坂矢): 箔のテクスチャーがすごいですね。今回、自然光や小さな蝋燭一本の灯りだけで撮影したショットもあるんですが、直線とカーブでは質感の浮かび方が全く違っていて。

内田 武彦(以下、内田): アールの部分がハイライトになってね。今回使用したのは24K にプラチナを加えた箔なので、少し落ち着いた印象ですね。

坂矢: プラチナが入った色合いだったんですね。そもそも、なぜ箔を取り入れることにしたのですか。

内田: 金沢発祥の家具というのは創業当初からの大前提にあって、Tesera を立ち上げる以前から石川県ならではの技術や材料を使ったものづくりには、10 年ほど前から積極的に取り組んでいます。たとえば、伝統工芸の技術を活かして、金を使わない蒔絵の技法でキッチンのドアを作ったり、輪島塗や加賀友禅の職人とコラボレーションしたり。今回のデザインでは、派手になりすぎないように、箔をアクセントとして使いました。

坂矢: 経営者をはじめ縁起を担ぎたい方も多いと思いますが、そういう意味での金の持つ力も感じます。

内田: 金の魅力は、いつの時代も万国共通ですよね。この箔を貼る技術も、本当に素晴らしい。ヨーロッパでは、こういった装飾は真鍮を使って簡単に仕上げてしまうことが多いので、見る人が見れば、職人技の精巧さに驚くはず。

坂矢: 細部へのこだわりが際立っていますね。意識しなくても、見えてきます。

内田: やはり、造作家具とは一線を画します。量産家具の設計では、製造のしやすさを考慮し、5、10、15 などの単純なアールが使われることが多い。でも、Tesera では小数点以下までこだわった複合アールを採用し、金型をつくっています。一見すると違いがわからないかもしれませんが、全体の印象としてディテールが集合することでデザイナーの手が入ったものは違うと感じさせるんです。ディテールに神は宿ると言いますが、まさにこのことです。

Lowboard
Mr.大勉強のお気に召すスタイルEdition
W2206 X D450 X H472
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